2004年 09月 19日
変動期にありがちな反応 |
「拡大し続けるこの新技術の危険な影響は、米国の映画産業の活発な経済活動と将来性を脅かしている」「この技術を前にした米国の映画産業と米国民は、連続暴行魔を前にした女性のようなものだ」。米連邦議会下院司法委員会の公聴会で、米映画協会のバレンティ会長は新技術がもたらす脅威をこう語った。
こう書くと、同会長が驚異ととらえる新技術とは、現在世界の音楽、映画、ゲーム業界を震撼させているファイル交換ソフトのことだと勘違いされる方が読者の中に多くいるかもしれない。
しかし同公聴会でこの証言が行われたのは、1982年のこと。同会長が新技術と呼んだのは、家庭用VTRのことだった。
同会長はVTRが普及すれば映画が違法にコピーされるようになり、映画業界は壊滅的な影響を受けると危惧したのだ。
なんとしても「連続暴行魔」の家庭用VTRの普及に歯止めをかけなければならない。あせった米映画業界は、代表的な家庭用VTRメーカーとしてソニーを提訴、そして敗訴している。
米映画業界の危惧が単なる杞憂に終わったのは周知の通り。VTRはレンタルビデオ産業という新しい産業を作り出し、レンタルビデオからの収益は映画会社の全体の収益の65%にも達しているといわれる。VTRは映画業界にとって連続暴行魔どころかヒーローとなったわけだ。
ソニーに敗訴したことは、映画業界にとってはかえってよかった。もし映画業界が勝訴していればレンタルビデオという産業は生まれていなかっただろう。
これまでコンテンツ業界は新しい技術が登場するたびに大騒ぎを繰り返してきた。またどれだけ大騒ぎしても技術革新の波をくい止めることはできなかった。だが皮肉なことに、くい止めることができなかったことがコンテンツ業界にとってプラスの結果になっていることも多い。
グーグルニュースに関する日本の新聞業界の苦悩も、前回の書き込みに対するコメントとしてkatuteさんかた紹介していただいたニューヨークタイムズの苦悩「『Google』で検索できない『ニューヨーク・タイムズ・コム』の問題点」も、新しい技術の登場の際にありがちなコンテンツ業界の反応といえる。
もし過去の法則が今回も当てはまるのであれば、商業ジャーナリズムはインターネットという技術革新に対しいつまでも抵抗し続けられないだろう。そして、ネットは商業ジャーナリズムにとって朗報となり、商業ジャーナリズムはさらなる発展を遂げるだろう。
ただ商業ジャーナリズムを構成するすべての企業が同様に発展するわけではない。新規参入企業が老舗企業にとって代わるということがあるかもしれない。
わたしは、グーグルニュースを拒否する報道機関の判断を否定するつもりはない。その判断が技術動向を見据えた上での戦略的な判断であれば問題はない。機が熟したと判断したときに打って出るという戦略もあるだろう。
しかしもし長期戦略も持たずにグーグルニュースを否定するのであれば問題だ。現状にしがみついているだけの企業には、未来は決して来ないからだ。
こう書くと、同会長が驚異ととらえる新技術とは、現在世界の音楽、映画、ゲーム業界を震撼させているファイル交換ソフトのことだと勘違いされる方が読者の中に多くいるかもしれない。
しかし同公聴会でこの証言が行われたのは、1982年のこと。同会長が新技術と呼んだのは、家庭用VTRのことだった。
同会長はVTRが普及すれば映画が違法にコピーされるようになり、映画業界は壊滅的な影響を受けると危惧したのだ。
なんとしても「連続暴行魔」の家庭用VTRの普及に歯止めをかけなければならない。あせった米映画業界は、代表的な家庭用VTRメーカーとしてソニーを提訴、そして敗訴している。
米映画業界の危惧が単なる杞憂に終わったのは周知の通り。VTRはレンタルビデオ産業という新しい産業を作り出し、レンタルビデオからの収益は映画会社の全体の収益の65%にも達しているといわれる。VTRは映画業界にとって連続暴行魔どころかヒーローとなったわけだ。
ソニーに敗訴したことは、映画業界にとってはかえってよかった。もし映画業界が勝訴していればレンタルビデオという産業は生まれていなかっただろう。
これまでコンテンツ業界は新しい技術が登場するたびに大騒ぎを繰り返してきた。またどれだけ大騒ぎしても技術革新の波をくい止めることはできなかった。だが皮肉なことに、くい止めることができなかったことがコンテンツ業界にとってプラスの結果になっていることも多い。
グーグルニュースに関する日本の新聞業界の苦悩も、前回の書き込みに対するコメントとしてkatuteさんかた紹介していただいたニューヨークタイムズの苦悩「『Google』で検索できない『ニューヨーク・タイムズ・コム』の問題点」も、新しい技術の登場の際にありがちなコンテンツ業界の反応といえる。
もし過去の法則が今回も当てはまるのであれば、商業ジャーナリズムはインターネットという技術革新に対しいつまでも抵抗し続けられないだろう。そして、ネットは商業ジャーナリズムにとって朗報となり、商業ジャーナリズムはさらなる発展を遂げるだろう。
ただ商業ジャーナリズムを構成するすべての企業が同様に発展するわけではない。新規参入企業が老舗企業にとって代わるということがあるかもしれない。
わたしは、グーグルニュースを拒否する報道機関の判断を否定するつもりはない。その判断が技術動向を見据えた上での戦略的な判断であれば問題はない。機が熟したと判断したときに打って出るという戦略もあるだろう。
しかしもし長期戦略も持たずにグーグルニュースを否定するのであれば問題だ。現状にしがみついているだけの企業には、未来は決して来ないからだ。
by tsuruaki_yukawa
| 2004-09-19 22:35
| グーグルニュースの衝撃