2004年 09月 02日
グーグルニュースの衝撃 |
前回の「グーグルニュース、新聞業界はどう出る」を読んだ複数の新聞関係者の方から連絡をいただいた。グーグルは会見で「報道機関にはまだ接触していない」と明言していたが、複数の新聞関係者によるとグーグルはグーグルニュース開始に当たり、大手マスコミにはあいさつ回りをしていたようだ。
各社ともどう対処するかの判断は、どうやらもう済んでいるらしい。つまりグーグルニュースに出てこない大手1,2社は拒否、残りの社は了承ということになる。
つい最近、技術的には劣るもののグーグルニュースと同様のサービスを始めた日本のベンチャーに対し、大手マスコミ何社かで抗議しサービス中止に追い込んだという話を聞いたことがある。
ところが1,2社を除く報道各社は手の平を返したようにグーグルニュースを受け入れてしまった。短期間に時代の変化を敏感に読み取り戦略転換したのか、それとも相手をみてケンカをするだけなのかのか。この際、その理由は問うまい。どういう理由であれ、新聞業界はグーグルニュースという後戻りできない橋を渡った。新聞業界は、今後大きく変わらざるを得なくなる。
まず新聞記者が変わる可能性がある。新聞記者はこれまで記者クラブの中だけで競争していたところがある。一部の大スクープを除いて、一般読者はそれぞれの記事についてどの社が「抜いて」、どの社が「抜かれたか」という事実をほとんど知らない。それを知っているのは同じ記者クラブにいる記者仲間だけだ。仲間内で「勝った」「負けた」の競争を繰り返しているところが多分にある。
それがグーグルニュースのおかげで、会社内、業界内の人間はもとより、取材先、一般読者にまで、それぞれの記事に関して、どこが勝ち、どこが負けたかが一目瞭然となるのではなかろうか。
社会におけるインターネットの情報ツールとしての地位がますます向上することは間違いない。「紙面上」でどの社がどう報道したかより、「ネット上」でどの社がどう報道したかの方が重要になる時代というものが、いずれくるような気がする。
テレビの朝のワイドショーで行っている「朝刊チェック」的なコーナーは、「グーグルニュースチェック」「インターネットニュースサイトチェック」的なものに変わっていくのではなかろうか。
ネットが社会により浸透したときに、スクープをどこよりも早く入手した記者は、まずネットで先にニュースを流し、社会全般に自分のスクープであることを知らしめたいと思うようになる可能性がある。
以前ある大手新聞社の電子メディア部門の責任者から「インターネット時代だというのに記者は紙の締め切り時間だけを気にして、記事を電子メディア向けに早く送ってこようとしない。どうすれば米国の記者のように『第一報はネットへ』という意識を徹底させることができるのだろうか」という相談を受けたことがある。
確かに米国では新聞記者はまず第一報をネットで流したがる。そして翌日の朝刊向けには、より詳しく正確に記事を書くようになっている。
その理由を考えてみたのだが、ネットがどれだけ一般的な市民の生活に溶け込んでいるか、ということぐらいしか日米での違いを思い浮かべることができない。もしそれが原因なら、いずれ日本の記者も第一報をネットで流したいと思うようになると思う。未来の歴史家は、日本の記者の意識改革はグーグルニュースから始まったと言うかもしれない。
次に、各社の電子メディア戦略も変化するだろう。
グーグルニュースを見ていただければよく分かると思うが、非常によくできている。多くの報道機関がグーグルニュースの取り組みを了承したことで、米国同様、日本でもグーグルニュースがニュースサイトの王座につくことがほぼ確定的となった。
もちろんヤフー、マイクロソフトが、グーグルに追いつき追い越そうと、検索技術の改良に躍起になっているので、中長期的にはどうなるのか分からない。ただ少なくともしばらくの間は、グーグルニュースが他のニュースサイトを寄せ付けないだろう。
もちろん「他のニュースサイト」にはアサヒコム、毎日MSNも含まれる。これまで新聞社サイトはどこも、ニュースサイトの王座を狙っていた。ニュースを中心とした情報ポータル戦略を進めていたのだ。だが、グーグルニュースの王座がほぼ確定したことで、ポータル的な戦略を改めなければならなくなった。
朝日新聞は早くからこのことに気づいていた。だからどこよりも早くRSS配信を始めたのだ。
マスコミサイトはどこも、ニュースというコンテンツを提供するコンテンツ提供者になってしまうわけだ。ニュースというコンテンツに磨きをかけることは、もちろん大事だ。しかし新聞牛丼論で述べてように、それだけでは十分な収益をあげることは不可能。ニュースサイトは未来永劫儲からない、とこれまで何度も主張してきたが、コンテンツ提供事業に専念すればますます儲からなくなるだろう。
そこでニュース提供事業とは別の新しいビジネスモデルが必要になる。それは何か。わたしはある種のコミュニティー事業だと考えている。
毎日MSNは早くからこのことに気づいている。米国のMSN本家でさえ始めていないブログサービスに、いち早く乗り出したのはこのためだ。
報道機関の間にタイムラグは生じるだろう。しかし、ニュースサイトがコミュニティーサイトへ進化し、一般市民の声がジャーナリズムに反映されるようになるのではなかろうか。報道機関が迷い込んだインターネットという暗闇の中に今、参加型ジャーナリズムという出口からの光が差し込んできたのだ!
各社ともどう対処するかの判断は、どうやらもう済んでいるらしい。つまりグーグルニュースに出てこない大手1,2社は拒否、残りの社は了承ということになる。
つい最近、技術的には劣るもののグーグルニュースと同様のサービスを始めた日本のベンチャーに対し、大手マスコミ何社かで抗議しサービス中止に追い込んだという話を聞いたことがある。
ところが1,2社を除く報道各社は手の平を返したようにグーグルニュースを受け入れてしまった。短期間に時代の変化を敏感に読み取り戦略転換したのか、それとも相手をみてケンカをするだけなのかのか。この際、その理由は問うまい。どういう理由であれ、新聞業界はグーグルニュースという後戻りできない橋を渡った。新聞業界は、今後大きく変わらざるを得なくなる。
まず新聞記者が変わる可能性がある。新聞記者はこれまで記者クラブの中だけで競争していたところがある。一部の大スクープを除いて、一般読者はそれぞれの記事についてどの社が「抜いて」、どの社が「抜かれたか」という事実をほとんど知らない。それを知っているのは同じ記者クラブにいる記者仲間だけだ。仲間内で「勝った」「負けた」の競争を繰り返しているところが多分にある。
それがグーグルニュースのおかげで、会社内、業界内の人間はもとより、取材先、一般読者にまで、それぞれの記事に関して、どこが勝ち、どこが負けたかが一目瞭然となるのではなかろうか。
社会におけるインターネットの情報ツールとしての地位がますます向上することは間違いない。「紙面上」でどの社がどう報道したかより、「ネット上」でどの社がどう報道したかの方が重要になる時代というものが、いずれくるような気がする。
テレビの朝のワイドショーで行っている「朝刊チェック」的なコーナーは、「グーグルニュースチェック」「インターネットニュースサイトチェック」的なものに変わっていくのではなかろうか。
ネットが社会により浸透したときに、スクープをどこよりも早く入手した記者は、まずネットで先にニュースを流し、社会全般に自分のスクープであることを知らしめたいと思うようになる可能性がある。
以前ある大手新聞社の電子メディア部門の責任者から「インターネット時代だというのに記者は紙の締め切り時間だけを気にして、記事を電子メディア向けに早く送ってこようとしない。どうすれば米国の記者のように『第一報はネットへ』という意識を徹底させることができるのだろうか」という相談を受けたことがある。
確かに米国では新聞記者はまず第一報をネットで流したがる。そして翌日の朝刊向けには、より詳しく正確に記事を書くようになっている。
その理由を考えてみたのだが、ネットがどれだけ一般的な市民の生活に溶け込んでいるか、ということぐらいしか日米での違いを思い浮かべることができない。もしそれが原因なら、いずれ日本の記者も第一報をネットで流したいと思うようになると思う。未来の歴史家は、日本の記者の意識改革はグーグルニュースから始まったと言うかもしれない。
次に、各社の電子メディア戦略も変化するだろう。
グーグルニュースを見ていただければよく分かると思うが、非常によくできている。多くの報道機関がグーグルニュースの取り組みを了承したことで、米国同様、日本でもグーグルニュースがニュースサイトの王座につくことがほぼ確定的となった。
もちろんヤフー、マイクロソフトが、グーグルに追いつき追い越そうと、検索技術の改良に躍起になっているので、中長期的にはどうなるのか分からない。ただ少なくともしばらくの間は、グーグルニュースが他のニュースサイトを寄せ付けないだろう。
もちろん「他のニュースサイト」にはアサヒコム、毎日MSNも含まれる。これまで新聞社サイトはどこも、ニュースサイトの王座を狙っていた。ニュースを中心とした情報ポータル戦略を進めていたのだ。だが、グーグルニュースの王座がほぼ確定したことで、ポータル的な戦略を改めなければならなくなった。
朝日新聞は早くからこのことに気づいていた。だからどこよりも早くRSS配信を始めたのだ。
マスコミサイトはどこも、ニュースというコンテンツを提供するコンテンツ提供者になってしまうわけだ。ニュースというコンテンツに磨きをかけることは、もちろん大事だ。しかし新聞牛丼論で述べてように、それだけでは十分な収益をあげることは不可能。ニュースサイトは未来永劫儲からない、とこれまで何度も主張してきたが、コンテンツ提供事業に専念すればますます儲からなくなるだろう。
そこでニュース提供事業とは別の新しいビジネスモデルが必要になる。それは何か。わたしはある種のコミュニティー事業だと考えている。
毎日MSNは早くからこのことに気づいている。米国のMSN本家でさえ始めていないブログサービスに、いち早く乗り出したのはこのためだ。
報道機関の間にタイムラグは生じるだろう。しかし、ニュースサイトがコミュニティーサイトへ進化し、一般市民の声がジャーナリズムに反映されるようになるのではなかろうか。報道機関が迷い込んだインターネットという暗闇の中に今、参加型ジャーナリズムという出口からの光が差し込んできたのだ!
by tsuruaki_yukawa
| 2004-09-02 18:25
| グーグルニュースの衝撃