2006年 01月 13日
熱心な若手、無関心な40代 |
◎既存メディアの今後のビジネスモデルとは
さてそれでは、これから新聞やテレビといったマスメディア企業はどのようなビジネスモデルを追求していくのか、追求していくべきなのかを考えてみたい。
ビジネスモデルのことを話していると、一部の既存メディア関係者から「市場の論理を優先したり、金儲けのことばかり考えていては、ジャーナリズムの質が低下しないか」という質問というか反論を必ず受ける。そういう人は、恐らく今後も既存メディア企業の経営基盤が安泰だと思っているのだろう。安泰であるならば、市場の論理を優先する必要はない。
しかしインターネットの津波は、金融業界、通信業界を飲み込んだあと、次はマスメディア業界に向かっている、というのがわたしの認識である。津波に飲み込まれたあとの経済基盤の構築を準備しなければ、ジャーナリズムの質が低下するどころか、ジャーナリズムを実践できなくなるのではなかろうか。既存メディア企業は、今こそ新しいビジネスモデルを検討しなければならないと思う。
▼熱心な30代、無関心な40代
既存メディア企業の中で最も早く危機感を持ったのは、30代以下の若手だった。新聞業界の主に若手で構成する労働組合団体の日本新聞労働組合連合(新聞労連)は1996年から議論を続け、98年に「新聞が消えた日―2010年へのカウントダウン」という本を出版している。
そして新聞労連の青年女性部は2004年1月に徳島で全国学習交流会を開催。そのときのテーマは「本日廃刊・・・となる前に」というものだった。
新聞労連はまた2005年6月に東京で産業研究学習会を開催し、電子メディア事業に関する情報収集と意見交換を行っている。
労働組合は普通、経営戦略にまでは立ち入らないものだ。経営陣が明日に向けた戦略を立案できないのなら、自分たち若者で立案する、ということなのだろう。
そんな新聞労連の関係者の中から有志が集まって、地方メディアの近未来像を探ろうと、ネット上のコミュニティーサイト「ミクシィ」内に「ローカルメディアネットワーク」いうサークルを立ち上げている。関係者によると、このサークルの中での議論を通じて、ローカルコミュニティーサイトを中心とした新しいビジネスモデルの骨格がかなりできあがってきているようだ。
そのサークルのメンバーが中心になり、2005年11月のある週末に東京で勉強会を開催した。「TOKYOツーデイズ/緊急キックオフ座談会」という名称で、テーマは「~ネット社会で生き抜くための地方紙のあり方とは~新聞社と生活者とのネットワークコミュニティーづくりへの道程」というものだった。
この勉強会にわたしも参加させていただいたのだが、会場となった都内のネット企業の会議室には、十数社の地方紙関係者ら数十人が集まって熱気ムンムンとなった。またテレビ会議システムを北海道、仙台、神戸、沖縄につなぎ、それぞれの会場に集まった地方紙関係者とも熱い議論を行った。
驚いたのは、ほとんどの参加者が、この勉強会に参加するに当たっての資金援助を、所属する新聞社からまったく受けていないということだった。参加者の東京までの交通費、宿泊費はすべて自己負担。社の援助がなくとも、身銭をきってでも、自分たちの会社、業界を守るために何をすべきかを見つけたいという人たちの集まりだった。議論が熱くなるのも当然だった。
次に危機感を持ったのは、経営者層だった。2005年の秋くらいだろうか。新聞業界の業界紙などの経営者インタビューの中でインターネットを意識した発言が目立つようになってきたと思う。また社長直轄のネット関連の勉強・研究組織ができた、というような話をあちらこちらで耳にするようになった。
最後まで危機感を持っていないのが、層としては40代、50代だろう。中間管理職として会社や業界を引っ張っていかなければならない層だ。もちろん熱心な人もいるが、圧倒的多数がネット事業には無関心だ。
ある新聞社で「これからの新聞社経営とは」というテーマで講演させてもらったことがある。主にネットの現状とビジネスモデルについてお話させていただいた。講演が幹部研修の一環ということもあって、参加者のほとんどが40代、50代。1時間ほどの講演だったが、途中で多くの人がうつらうつらし始めた。講演後も質問がほとんどでなかった。熱気いっぱいだった地方紙若手の勉強会の雰囲気とは、本当に対照的だった。
▼急に関心を持ち出した経営層が打ち出しそうな手
さて既存メディア企業にとって、どのようなビジネスモデルが有効なのだろうか。わたし自身、考えがないわけではないが、わたしの考えを述べる前に、既存メディア企業は今後どのような手を打って出そうか。そうすることで業界の勢力図はどうなるのか、ということを頭の体操として予測してみたい。
現状は先に述べた通り。ネット事業にもっとも詳しいのは若者で、経営者もネット事業に関心を持ち始めてきた。中間管理職は、いまだにほとんど関心を持っていない。
こういう状況だとどういうことが起こるか。あり得るシナリオを想定してみよう。
著者注:本として出版するための原稿ですが、未完成なものです。間違いの指摘やご意見をいただければ幸いです。「過去エントリをそのまま記録として残すべきだ」「細かな修正を加えるたびにPINGが飛び、RSSリーダーにほぼ同じ原稿が表示されるので困る」などという意見をいただきましたので、ご意見、ご指摘をいただいても、エントリ自体を修正しないことにしています。ですが、建設的なご指摘、ご意見は、最終原稿に必ず反映させるつもりです。繰り返しになりますが、本エントリは未完成原稿です。引用を希望される場合は、脚注にある原典に当たられることをお勧めします。
参考「本を書きます」
このworkは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下でライセンスされています。
さてそれでは、これから新聞やテレビといったマスメディア企業はどのようなビジネスモデルを追求していくのか、追求していくべきなのかを考えてみたい。
ビジネスモデルのことを話していると、一部の既存メディア関係者から「市場の論理を優先したり、金儲けのことばかり考えていては、ジャーナリズムの質が低下しないか」という質問というか反論を必ず受ける。そういう人は、恐らく今後も既存メディア企業の経営基盤が安泰だと思っているのだろう。安泰であるならば、市場の論理を優先する必要はない。
しかしインターネットの津波は、金融業界、通信業界を飲み込んだあと、次はマスメディア業界に向かっている、というのがわたしの認識である。津波に飲み込まれたあとの経済基盤の構築を準備しなければ、ジャーナリズムの質が低下するどころか、ジャーナリズムを実践できなくなるのではなかろうか。既存メディア企業は、今こそ新しいビジネスモデルを検討しなければならないと思う。
▼熱心な30代、無関心な40代
既存メディア企業の中で最も早く危機感を持ったのは、30代以下の若手だった。新聞業界の主に若手で構成する労働組合団体の日本新聞労働組合連合(新聞労連)は1996年から議論を続け、98年に「新聞が消えた日―2010年へのカウントダウン」という本を出版している。
そして新聞労連の青年女性部は2004年1月に徳島で全国学習交流会を開催。そのときのテーマは「本日廃刊・・・となる前に」というものだった。
新聞労連はまた2005年6月に東京で産業研究学習会を開催し、電子メディア事業に関する情報収集と意見交換を行っている。
労働組合は普通、経営戦略にまでは立ち入らないものだ。経営陣が明日に向けた戦略を立案できないのなら、自分たち若者で立案する、ということなのだろう。
そんな新聞労連の関係者の中から有志が集まって、地方メディアの近未来像を探ろうと、ネット上のコミュニティーサイト「ミクシィ」内に「ローカルメディアネットワーク」いうサークルを立ち上げている。関係者によると、このサークルの中での議論を通じて、ローカルコミュニティーサイトを中心とした新しいビジネスモデルの骨格がかなりできあがってきているようだ。
そのサークルのメンバーが中心になり、2005年11月のある週末に東京で勉強会を開催した。「TOKYOツーデイズ/緊急キックオフ座談会」という名称で、テーマは「~ネット社会で生き抜くための地方紙のあり方とは~新聞社と生活者とのネットワークコミュニティーづくりへの道程」というものだった。
この勉強会にわたしも参加させていただいたのだが、会場となった都内のネット企業の会議室には、十数社の地方紙関係者ら数十人が集まって熱気ムンムンとなった。またテレビ会議システムを北海道、仙台、神戸、沖縄につなぎ、それぞれの会場に集まった地方紙関係者とも熱い議論を行った。
驚いたのは、ほとんどの参加者が、この勉強会に参加するに当たっての資金援助を、所属する新聞社からまったく受けていないということだった。参加者の東京までの交通費、宿泊費はすべて自己負担。社の援助がなくとも、身銭をきってでも、自分たちの会社、業界を守るために何をすべきかを見つけたいという人たちの集まりだった。議論が熱くなるのも当然だった。
次に危機感を持ったのは、経営者層だった。2005年の秋くらいだろうか。新聞業界の業界紙などの経営者インタビューの中でインターネットを意識した発言が目立つようになってきたと思う。また社長直轄のネット関連の勉強・研究組織ができた、というような話をあちらこちらで耳にするようになった。
最後まで危機感を持っていないのが、層としては40代、50代だろう。中間管理職として会社や業界を引っ張っていかなければならない層だ。もちろん熱心な人もいるが、圧倒的多数がネット事業には無関心だ。
ある新聞社で「これからの新聞社経営とは」というテーマで講演させてもらったことがある。主にネットの現状とビジネスモデルについてお話させていただいた。講演が幹部研修の一環ということもあって、参加者のほとんどが40代、50代。1時間ほどの講演だったが、途中で多くの人がうつらうつらし始めた。講演後も質問がほとんどでなかった。熱気いっぱいだった地方紙若手の勉強会の雰囲気とは、本当に対照的だった。
▼急に関心を持ち出した経営層が打ち出しそうな手
さて既存メディア企業にとって、どのようなビジネスモデルが有効なのだろうか。わたし自身、考えがないわけではないが、わたしの考えを述べる前に、既存メディア企業は今後どのような手を打って出そうか。そうすることで業界の勢力図はどうなるのか、ということを頭の体操として予測してみたい。
現状は先に述べた通り。ネット事業にもっとも詳しいのは若者で、経営者もネット事業に関心を持ち始めてきた。中間管理職は、いまだにほとんど関心を持っていない。
こういう状況だとどういうことが起こるか。あり得るシナリオを想定してみよう。
著者注:本として出版するための原稿ですが、未完成なものです。間違いの指摘やご意見をいただければ幸いです。「過去エントリをそのまま記録として残すべきだ」「細かな修正を加えるたびにPINGが飛び、RSSリーダーにほぼ同じ原稿が表示されるので困る」などという意見をいただきましたので、ご意見、ご指摘をいただいても、エントリ自体を修正しないことにしています。ですが、建設的なご指摘、ご意見は、最終原稿に必ず反映させるつもりです。繰り返しになりますが、本エントリは未完成原稿です。引用を希望される場合は、脚注にある原典に当たられることをお勧めします。
参考「本を書きます」
このworkは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下でライセンスされています。
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by tsuruaki_yukawa
| 2006-01-13 17:49
| 本の原稿