2004年 10月 28日
ブログを変えるテクノラティの衝撃 |
技術取材を長年続けていると時々思うのだが、広く普及し社会に大きな影響を与える技術とそうでない技術の間には、実はちょっとした違いしかないことが多い。10年近く前に当時最も人気のあったブラウザー「ネットスケープ・ナビゲーター」にホームページ作成機能がついた。そのことを紹介する記事の中でわたしは「これで一般ユーザーは情報の受け手だけではなく出し手にも成り得る。ネットが大きく変わることになるだろう」と書いた。実際には、その機能を使って情報発信するユーザーはそう多くなかった。「情報を発信したい一般市民はそう多くないのだよ」と結論づける人もいた。
それから数年。ブログが登場した。
ホームページ作りが簡単になった。乱暴な言い方をすれば、ただそれだけのことだ。実際、ブログを持っていない人の多くは、ブログに対してその程度の認識しか持っていない。「単なるホームページだろ」という認識だ。しかし実際にブログを持っているみなさんなら、ブログが非常に大きな可能性を持っていることを肌で感じていることだろう。
テクノラティという技術がある。やはり乱暴な言い方をすれば、ブログ専用の検索エンジンだ。この検索エンジンが米国のブロガーにとって不可欠のツールになっている。ブログを使った議論がテクノラティによって変わったと言っても過言ではないという。
この何でもなさそうなブログ専用の検索エンジンの何がそんなにすごいのだろうか。
最大の特徴は、ブログの書き込んでから数分でその書き込みを検索できるということだ。グーグルの場合、ブログの書き込みがグーグルの検索結果に表示されるようになるまでに早くて半日、遅ければ1カ月後になることもあるという。
数分で検索できれば、何がどういいのだろう。
例えばこんな使い方ができる。テクノラティの会員になってWatch Listを作り、自分のブログのアドレスを登録しておく。これで自分のブログにだれかがリンクすると数分後には通知される仕組みになっている。リンクを張ってくれたブロガーの書き込みを読んで、それに対して新しく書き込みすることも可能。ブログを使った議論をリアルタイムでできるわけだ。
書籍データへのリンク数を比較することで、ブログ上で過去12時間で最も話題に上った書籍のランキングができる。ニュース記事へのリンク数を調べて、過去12時間で最も話題になったニュースのランキングを作ることができる。
今テクノラティ上で行われているのは、大統領選に関する世論調査だ。テクノラティは、ブロガーがどのニュース、どのブログにリンクしているかを調べることで、そのブロガーの政治的イデオロギーを判断する。その判断に基づいてブロガーを「リベラル」「保守」「中道」の3つのグループに分け、それぞれのグループで今どのようなことが話題になっているのかが分かるようにしている。
これこそ参加型ジャーナリズムの情報ハブサイトの1つの形態ではなかろうか。
テクノラティの日本語サービスの準備を進めているネオテニィーの伊藤穣一さんによると、テクノラティの登場で米国のブログ上の議論はリアルタイム性を増したという。この結果、米国のジャーナリズムは大きな影響を受けている。
まずブロガーが事実確認を担当してくれるようになった。記者の書いた記事がネット上に流れると、それを読んだブロガーが寄ってたかってあら探しをする。記事の内容や事実関係に間違いがあれば、すぐに指摘される。記者はテクノラティを使って、ほぼリアルタイムでブロガーの指摘する間違いに気づくことができ、非常に早い時点で記事を修正できる。テクノラティには、報道の質を高める効果があると指摘されているという。
その半面、記者とブロガーの速報合戦にもなっている。ブロガーはデスクやエディターなどを経ずに記事を流すことができる。速報戦では記者よりも有利なわけだ。速報でブロガーに対抗しようとするため記者が十分に事実確認せずに記事を流すようになるのではないか、という指摘もあるようだ。
テクノラティの競争優位性は、ブログの情報をいち早く収集し索引をつけてデータベースにするところにある。そのデータベースを使えば、書籍ランキング、ニュースランキング、大統領選世論調査以外にも、いろいろな用途に利用できそう。ライセンスさえ取得すればテクノラティのデータベースを応用したいろいろな情報ハブの構築が可能になる。あとはアイデア勝負だ。
伊藤さん自身は、テクノラティのアラート機能を大幅に拡充させたいという。例えば、自分と同じ音楽の趣味を持つブロガーが新しいアーチストのことをブログに書いたときに知らせる、というようにテクノラティを自由自在に設定できるようにしたいと言う。また、アラートの内容によって「すぐに知らせる」「仕事が終わったときに知らせる」などのランク付けをできるようにしたいとも言う。アラート機能は、パソコンメール、ケータイメール、インスタントメッセンジャーなど、状況に応じて出すチャンネルを変えることができれば便利かもしれない。アラートのランクに従って、ケータイのアラート通知のライト表示が赤になったり青になったりすれば、なお便利だ。
そうなれば情報収集の形は、ブラウザーを使って情報を探し出すという「情報プル」から、信頼できるブログを通じて情報が送られてくる「情報プッシュ」に移行するのではなかろうか。伊藤さんは「ブラウザーが情報収集ツールの主役の時代は終わるのではないか」と指摘する。
情報が上から下へ流れる時代から、横のつながりを通じて流れる時代へー。以前、紹介したライブドアの堀江貴文さんの「ブログのおかげで情報が横のつながりで流れ始めた。ネット上にパラダイムシフトが起ころうとしている」という考え方と非常によく似ている。伊藤穣一、堀江貴文といったビジョナリーたちは、同じような未来を見ているのだろうか。
さてそのテクノラティがいよいよ来年早々にも日本語サービスを開始する。正式発表は11月初旬に行われる予定。テクノラティは、日本のブログを、参加型ジャーナリズムを、どのように変えてくれるのだろうか。
それから数年。ブログが登場した。
ホームページ作りが簡単になった。乱暴な言い方をすれば、ただそれだけのことだ。実際、ブログを持っていない人の多くは、ブログに対してその程度の認識しか持っていない。「単なるホームページだろ」という認識だ。しかし実際にブログを持っているみなさんなら、ブログが非常に大きな可能性を持っていることを肌で感じていることだろう。
テクノラティという技術がある。やはり乱暴な言い方をすれば、ブログ専用の検索エンジンだ。この検索エンジンが米国のブロガーにとって不可欠のツールになっている。ブログを使った議論がテクノラティによって変わったと言っても過言ではないという。
この何でもなさそうなブログ専用の検索エンジンの何がそんなにすごいのだろうか。
最大の特徴は、ブログの書き込んでから数分でその書き込みを検索できるということだ。グーグルの場合、ブログの書き込みがグーグルの検索結果に表示されるようになるまでに早くて半日、遅ければ1カ月後になることもあるという。
数分で検索できれば、何がどういいのだろう。
例えばこんな使い方ができる。テクノラティの会員になってWatch Listを作り、自分のブログのアドレスを登録しておく。これで自分のブログにだれかがリンクすると数分後には通知される仕組みになっている。リンクを張ってくれたブロガーの書き込みを読んで、それに対して新しく書き込みすることも可能。ブログを使った議論をリアルタイムでできるわけだ。
書籍データへのリンク数を比較することで、ブログ上で過去12時間で最も話題に上った書籍のランキングができる。ニュース記事へのリンク数を調べて、過去12時間で最も話題になったニュースのランキングを作ることができる。
今テクノラティ上で行われているのは、大統領選に関する世論調査だ。テクノラティは、ブロガーがどのニュース、どのブログにリンクしているかを調べることで、そのブロガーの政治的イデオロギーを判断する。その判断に基づいてブロガーを「リベラル」「保守」「中道」の3つのグループに分け、それぞれのグループで今どのようなことが話題になっているのかが分かるようにしている。
これこそ参加型ジャーナリズムの情報ハブサイトの1つの形態ではなかろうか。
テクノラティの日本語サービスの準備を進めているネオテニィーの伊藤穣一さんによると、テクノラティの登場で米国のブログ上の議論はリアルタイム性を増したという。この結果、米国のジャーナリズムは大きな影響を受けている。
まずブロガーが事実確認を担当してくれるようになった。記者の書いた記事がネット上に流れると、それを読んだブロガーが寄ってたかってあら探しをする。記事の内容や事実関係に間違いがあれば、すぐに指摘される。記者はテクノラティを使って、ほぼリアルタイムでブロガーの指摘する間違いに気づくことができ、非常に早い時点で記事を修正できる。テクノラティには、報道の質を高める効果があると指摘されているという。
その半面、記者とブロガーの速報合戦にもなっている。ブロガーはデスクやエディターなどを経ずに記事を流すことができる。速報戦では記者よりも有利なわけだ。速報でブロガーに対抗しようとするため記者が十分に事実確認せずに記事を流すようになるのではないか、という指摘もあるようだ。
テクノラティの競争優位性は、ブログの情報をいち早く収集し索引をつけてデータベースにするところにある。そのデータベースを使えば、書籍ランキング、ニュースランキング、大統領選世論調査以外にも、いろいろな用途に利用できそう。ライセンスさえ取得すればテクノラティのデータベースを応用したいろいろな情報ハブの構築が可能になる。あとはアイデア勝負だ。
伊藤さん自身は、テクノラティのアラート機能を大幅に拡充させたいという。例えば、自分と同じ音楽の趣味を持つブロガーが新しいアーチストのことをブログに書いたときに知らせる、というようにテクノラティを自由自在に設定できるようにしたいと言う。また、アラートの内容によって「すぐに知らせる」「仕事が終わったときに知らせる」などのランク付けをできるようにしたいとも言う。アラート機能は、パソコンメール、ケータイメール、インスタントメッセンジャーなど、状況に応じて出すチャンネルを変えることができれば便利かもしれない。アラートのランクに従って、ケータイのアラート通知のライト表示が赤になったり青になったりすれば、なお便利だ。
そうなれば情報収集の形は、ブラウザーを使って情報を探し出すという「情報プル」から、信頼できるブログを通じて情報が送られてくる「情報プッシュ」に移行するのではなかろうか。伊藤さんは「ブラウザーが情報収集ツールの主役の時代は終わるのではないか」と指摘する。
情報が上から下へ流れる時代から、横のつながりを通じて流れる時代へー。以前、紹介したライブドアの堀江貴文さんの「ブログのおかげで情報が横のつながりで流れ始めた。ネット上にパラダイムシフトが起ころうとしている」という考え方と非常によく似ている。伊藤穣一、堀江貴文といったビジョナリーたちは、同じような未来を見ているのだろうか。
さてそのテクノラティがいよいよ来年早々にも日本語サービスを開始する。正式発表は11月初旬に行われる予定。テクノラティは、日本のブログを、参加型ジャーナリズムを、どのように変えてくれるのだろうか。
by tsuruaki_yukawa
| 2004-10-28 21:41
| テクノラティ