2005年 09月 23日
テレビは広告媒体の王座を守れるか |
▼テレビは広告媒体の王座を守れるか
こうした邪魔にならない広告、役に立つ広告は今後も次々と開発され続けるだろう。グーグルやヤフー、マイクロソフトといった米国の大手IT企業が現在、開発競争にしのぎを削っているのが、映像検索だ。
メディアの近未来形が、映像を中心とするコンテンツを無尽蔵に蓄えるデータベースを持つ大規模メディアポータルになるという予測は既に述べた。無尽蔵の映像コンテンツの中から好みの映像を探し出してくるには、やはり映像検索技術が不可欠だ。そして映像を検索した際には、検索連動型広告が表示されるようになるのは間違いない。
しかしその形だと、広告収入はやはりグーグルなどの検索エンジンの会社に入ることになる。一方でHDDレコーダーでテレビコマーシャルが飛ばされるように、メディアポータル上でも不要なシーンは簡単に飛ばされるだろう。
テレビ局はどうすればいいのだろう。自らメディアポータルの座を狙ってネット企業と勝負するのか。それともネット企業運営のメディアポータルに番組を提供すべきだろうか。
メディアポータルと交渉することなどでコマーシャルを表示させ続けることは可能かもしれない。可能かもしれないが、わたしは広告以外の収入源も積極的に模索すべきだと思う。
それに実はマスメディア業界は、収入源の軸足を広告以外のものに移しつつあるのだ。Veronis Suhler Stevensonという銀行の2004年の調査によると、世界のメディア業界の収益源として広告外収入が広告収入を初めて上回ったという。主な広告外収入は、衛星放送、CATVなどの利用料、DVDやビデオの販売、インターネット接続料など。
日本でも今後はCATVなどの回線を通じたテレビ受信サービスの加入者が増えることで、広告外収入の割合が増すことになるのではなかろうか。
少し話が横道にそれるが、テレビ受信の3形態、つまりパソコン+インターネット、テレビ+有線、テレビ+電波が今後も共存すると先に書いた。ただその割合は変化する。携帯電話の普及で、回線につながった電話よりも、電波をつかう電話の数のほうが増えているように、テレビは反対に無線から有線へと移行していくだろう。
電話の場合は、「いつでもどこでも」というニーズが強いため、そのニーズに応えるためのたゆまない技術革新の結果、無線の電話の方が多くなっている。一方テレビの場合、「どこでも」というニーズはそれほど強くない。無線である必要性はないわけだ。それよりも多くの選択肢へのニーズがある。光ファイバー関連の技術革新が進み、そのニーズには応えるには現在のところ無線よりも有線のほうが有利になった。ゆえにテレビが無線から有線に移行しているわけだ。
ただテレビ+有線の料金収入が今後増加したとしても、テレビ局の広告収入の減少を補うことはできないだろう。広告市場が縮小するわけではない。どちらかといえば拡大するだろう。それでもテレビ局の収入増につながらないのは、テレビ以外の有効な広告媒体が今後次々登場することが見込まれるからだ。
カーナビで周辺の飲食店を検索する際に、飲食店の広告を表示すれば効果は高いだろう。広告に店内の写真やメニューなどが表示されれば、邪魔になるどころか役に立つ広告になるだろう。
グーグルで「ブーツ」と検索すると、ブーツの映像コマーシャルが見たい人には見ることができるようになっていても便利だと思う。
新しい広告の形態が次々と登場する中で、広告主の予算は幾つにも分散される。予算枠が決まっている以上、既存メディアの取り分は低下する一方だ。広告外収入が増加しても、広告収入の減少を補えない。有効な対策を講じることができなければ、既存メディア全体が厳しい時代を迎える。広告媒体の王者、テレビは今後、どう対応するのだろうか。
参考資料:nteractive Advertising Bureau (IAB) and PricewaterhouseCoopers (PWC).から発行された Ten Years of Online Advertising
著者注:間違いの指摘やご意見をいただければ幸いです。参考「本を書きます」
このworkは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下でライセンスされています。
こうした邪魔にならない広告、役に立つ広告は今後も次々と開発され続けるだろう。グーグルやヤフー、マイクロソフトといった米国の大手IT企業が現在、開発競争にしのぎを削っているのが、映像検索だ。
メディアの近未来形が、映像を中心とするコンテンツを無尽蔵に蓄えるデータベースを持つ大規模メディアポータルになるという予測は既に述べた。無尽蔵の映像コンテンツの中から好みの映像を探し出してくるには、やはり映像検索技術が不可欠だ。そして映像を検索した際には、検索連動型広告が表示されるようになるのは間違いない。
しかしその形だと、広告収入はやはりグーグルなどの検索エンジンの会社に入ることになる。一方でHDDレコーダーでテレビコマーシャルが飛ばされるように、メディアポータル上でも不要なシーンは簡単に飛ばされるだろう。
テレビ局はどうすればいいのだろう。自らメディアポータルの座を狙ってネット企業と勝負するのか。それともネット企業運営のメディアポータルに番組を提供すべきだろうか。
メディアポータルと交渉することなどでコマーシャルを表示させ続けることは可能かもしれない。可能かもしれないが、わたしは広告以外の収入源も積極的に模索すべきだと思う。
それに実はマスメディア業界は、収入源の軸足を広告以外のものに移しつつあるのだ。Veronis Suhler Stevensonという銀行の2004年の調査によると、世界のメディア業界の収益源として広告外収入が広告収入を初めて上回ったという。主な広告外収入は、衛星放送、CATVなどの利用料、DVDやビデオの販売、インターネット接続料など。
日本でも今後はCATVなどの回線を通じたテレビ受信サービスの加入者が増えることで、広告外収入の割合が増すことになるのではなかろうか。
少し話が横道にそれるが、テレビ受信の3形態、つまりパソコン+インターネット、テレビ+有線、テレビ+電波が今後も共存すると先に書いた。ただその割合は変化する。携帯電話の普及で、回線につながった電話よりも、電波をつかう電話の数のほうが増えているように、テレビは反対に無線から有線へと移行していくだろう。
電話の場合は、「いつでもどこでも」というニーズが強いため、そのニーズに応えるためのたゆまない技術革新の結果、無線の電話の方が多くなっている。一方テレビの場合、「どこでも」というニーズはそれほど強くない。無線である必要性はないわけだ。それよりも多くの選択肢へのニーズがある。光ファイバー関連の技術革新が進み、そのニーズには応えるには現在のところ無線よりも有線のほうが有利になった。ゆえにテレビが無線から有線に移行しているわけだ。
ただテレビ+有線の料金収入が今後増加したとしても、テレビ局の広告収入の減少を補うことはできないだろう。広告市場が縮小するわけではない。どちらかといえば拡大するだろう。それでもテレビ局の収入増につながらないのは、テレビ以外の有効な広告媒体が今後次々登場することが見込まれるからだ。
カーナビで周辺の飲食店を検索する際に、飲食店の広告を表示すれば効果は高いだろう。広告に店内の写真やメニューなどが表示されれば、邪魔になるどころか役に立つ広告になるだろう。
グーグルで「ブーツ」と検索すると、ブーツの映像コマーシャルが見たい人には見ることができるようになっていても便利だと思う。
新しい広告の形態が次々と登場する中で、広告主の予算は幾つにも分散される。予算枠が決まっている以上、既存メディアの取り分は低下する一方だ。広告外収入が増加しても、広告収入の減少を補えない。有効な対策を講じることができなければ、既存メディア全体が厳しい時代を迎える。広告媒体の王者、テレビは今後、どう対応するのだろうか。
参考資料:nteractive Advertising Bureau (IAB) and PricewaterhouseCoopers (PWC).から発行された Ten Years of Online Advertising
著者注:間違いの指摘やご意見をいただければ幸いです。参考「本を書きます」
このworkは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下でライセンスされています。
by tsuruaki_yukawa
| 2005-09-23 23:19
| 本の原稿