2005年 11月 10日
グーグルニュース対一部報道機関の戦い |
▼グーグルニュース対一部報道機関の戦い
さて話を少し元に戻すと、こうした日本の報道機関の直接リンクに関する警戒感を理解していたグーグル・ジャパンの幹部は、グーグルニュースのサービス開始に主な報道機関の電子メディア局を訪問し、新サービスの概要を説明し理解を乞うている。訪問を受けた報道機関の多くは「話を聞き置く」程度で、承認を与えるまでには至らなかったようだ。サービス開始当日のグーグルニュースには、明らかに大手何社かの記事が掲載されたいなかった。グーグルのソフトが入ってこれないようにコンピューターへの進入口をふさいでいたのだろう。またその後も1社、また1社とグーグルニュースから報道機関が姿を消し、グーグルニュースの主要記事のほとんどは朝日新聞か日本経済新聞のものになった。
グーグルニュースのコンピューターは、短時間に同じテーマの記事がどれだけ多く出ているかなどといったことを重要度の判断基準にしている。つまり記事を出す報道機関が数多く存在していて初めて成り立つ仕組みだ。大手報道機関が2,3社しか参加しないようではうまく機能しない。
満足なサービスを提供できないようでは、グーグルニュースのアクセス数はいずれ低下傾向を始める。グーグルニュース対グーグル拒否派報道機関との戦いは、拒否派報道機関の勝利ということになりそうな雲行きだった。幾つかのブログでは「グーグルの負け」という論調が目立っていた。
しかしわたしは一度離れた報道機関は、いずれグーグルニュースに戻ってくると思っていた。それは、「上から下」のネットの情報の流れが、いずれ「横から横」への情報の流れに取って代わられると考えていたからだ。トップページから入っていくというのは、表紙から順番にめくっていくというネット以前の媒体の接し方を継続したもの。いずれそうした接し方は、ブログなどのユーザー同士の横のつながりを通じた情報の流れに取って代わられるはず。いずれ広告主も情報の流れる方向の変化に気づき、広告媒体としてトップページを重視しなくなるはずだと読んでいた。しかしそうなるまでには、まだ2,3年かかるだろうと思っていた。
ところがその年の10月には毎日新聞の記事が、12月には読売新聞の記事がグーグルニュースに表示されるようになった。
いろいろなうわさが耳に入ってきた。グーグルが協力を拒否していた大手報道機関に配信料を支払うことにした、といううわさもあった。グーグルは当然、このうわさを全面的に否定している。グーグルニュースはあくまでも検索結果のページの1種であり、検索対象のページにリンク料、コンテンツ料を払っていては、グーグルのビジネスモデルは簡単に破綻する。
その一方で、「グーグルからリンクの見返りに何らかの恩恵を報道機関側が受けているという正式な説明を受けた」と証言する新聞関係者もいる。グーグルは報道機関に対し、金銭ではない、何らかの便宜を供与したのかもしれない。真実は明らかではない。聞く人間によって回答が違う。玉虫色の決着というやつかもしれない。
報道機関の内部は、ネットへの対応に関して決して一枚岩ではない。先進的な者が電子メディア局に集められ、そのほかの社内の保守派と対立している構図を、よくみかける。日本の一部新聞社がグーグルニュースを拒否したという情報は、海外にも流れた。米国人運営の複数のブログは、この話を日本の閉鎖性の1例として取り上げていた。海外での評判や国内のネット上でのイメージダウンを避けたい電子メディア局が、社内の保守派を納得させるためにグーグルから形ばかりの便宜を提供してもらった、というのが本当のところではないかとわたしは推測している。
形ばかりの便宜は、ほかのポータルから受ける記事配信料と比べればケタ違いに小さいものだろう。つまりグーグル対拒否派報道機関の戦いは、実質的にはグーグルの勝利だとわたしは考えている。拒否派報道機関は、ネットの巨人グーグルが引き連れてきた新しい時代のうねりに抗いきれなかった、ということなのかもしれない。
著者注:本として出版するための原稿ですが、未完成なものです。間違いの指摘やご意見をいただければ幸いです。参考「本を書きます」
このworkは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下でライセンスされています。
さて話を少し元に戻すと、こうした日本の報道機関の直接リンクに関する警戒感を理解していたグーグル・ジャパンの幹部は、グーグルニュースのサービス開始に主な報道機関の電子メディア局を訪問し、新サービスの概要を説明し理解を乞うている。訪問を受けた報道機関の多くは「話を聞き置く」程度で、承認を与えるまでには至らなかったようだ。サービス開始当日のグーグルニュースには、明らかに大手何社かの記事が掲載されたいなかった。グーグルのソフトが入ってこれないようにコンピューターへの進入口をふさいでいたのだろう。またその後も1社、また1社とグーグルニュースから報道機関が姿を消し、グーグルニュースの主要記事のほとんどは朝日新聞か日本経済新聞のものになった。
グーグルニュースのコンピューターは、短時間に同じテーマの記事がどれだけ多く出ているかなどといったことを重要度の判断基準にしている。つまり記事を出す報道機関が数多く存在していて初めて成り立つ仕組みだ。大手報道機関が2,3社しか参加しないようではうまく機能しない。
満足なサービスを提供できないようでは、グーグルニュースのアクセス数はいずれ低下傾向を始める。グーグルニュース対グーグル拒否派報道機関との戦いは、拒否派報道機関の勝利ということになりそうな雲行きだった。幾つかのブログでは「グーグルの負け」という論調が目立っていた。
しかしわたしは一度離れた報道機関は、いずれグーグルニュースに戻ってくると思っていた。それは、「上から下」のネットの情報の流れが、いずれ「横から横」への情報の流れに取って代わられると考えていたからだ。トップページから入っていくというのは、表紙から順番にめくっていくというネット以前の媒体の接し方を継続したもの。いずれそうした接し方は、ブログなどのユーザー同士の横のつながりを通じた情報の流れに取って代わられるはず。いずれ広告主も情報の流れる方向の変化に気づき、広告媒体としてトップページを重視しなくなるはずだと読んでいた。しかしそうなるまでには、まだ2,3年かかるだろうと思っていた。
ところがその年の10月には毎日新聞の記事が、12月には読売新聞の記事がグーグルニュースに表示されるようになった。
いろいろなうわさが耳に入ってきた。グーグルが協力を拒否していた大手報道機関に配信料を支払うことにした、といううわさもあった。グーグルは当然、このうわさを全面的に否定している。グーグルニュースはあくまでも検索結果のページの1種であり、検索対象のページにリンク料、コンテンツ料を払っていては、グーグルのビジネスモデルは簡単に破綻する。
その一方で、「グーグルからリンクの見返りに何らかの恩恵を報道機関側が受けているという正式な説明を受けた」と証言する新聞関係者もいる。グーグルは報道機関に対し、金銭ではない、何らかの便宜を供与したのかもしれない。真実は明らかではない。聞く人間によって回答が違う。玉虫色の決着というやつかもしれない。
報道機関の内部は、ネットへの対応に関して決して一枚岩ではない。先進的な者が電子メディア局に集められ、そのほかの社内の保守派と対立している構図を、よくみかける。日本の一部新聞社がグーグルニュースを拒否したという情報は、海外にも流れた。米国人運営の複数のブログは、この話を日本の閉鎖性の1例として取り上げていた。海外での評判や国内のネット上でのイメージダウンを避けたい電子メディア局が、社内の保守派を納得させるためにグーグルから形ばかりの便宜を提供してもらった、というのが本当のところではないかとわたしは推測している。
形ばかりの便宜は、ほかのポータルから受ける記事配信料と比べればケタ違いに小さいものだろう。つまりグーグル対拒否派報道機関の戦いは、実質的にはグーグルの勝利だとわたしは考えている。拒否派報道機関は、ネットの巨人グーグルが引き連れてきた新しい時代のうねりに抗いきれなかった、ということなのかもしれない。
著者注:本として出版するための原稿ですが、未完成なものです。間違いの指摘やご意見をいただければ幸いです。参考「本を書きます」
このworkは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下でライセンスされています。
by tsuruaki_yukawa
| 2005-11-10 08:01
| 本の原稿