参加型ジャーナリズムの課題、問題点 |
わたしは参加型ジャーナリズムに大きな期待を寄せているのだが、実は課題、問題点も多く抱えている。
その1つは、あらゆる情報がネット上に氾濫する中で、伝えるべき情報が伝わらない状況になっているということだ。情報の洪水の中で、重要な情報を集めてくるためには、どうすればいいのだろう。
いままではマスメディアがその役割を担ってきた。社会の構成員として知っておくべき情報や、議論すべきテーマなどをマスメディアが選択し、広く社会に伝えてきた。インターネット全盛時代には、その役割をだれが担うようになるのだろうか。
わたしは、インターネット上にマスメディア的な役割を果たす物は残ると思う。マスメディア的なものに加えて、ニッチメディア的な物、パーソナルメディア的な物がすべてネット上に存在するようになるのだと思う。
マスメディア的な物との例としては、報道機関のニュースサイトがまず挙げられるだろう。また個人の編集者が情報の取捨選択という意味でマスメディア的な役割を果たすようになるかもしれない。先に紹介した「EPIC2014」では、「新世代のフリーランス編集者が次々と生まれ、人々はEPICのコンテンツを選別し優先順位をつけるという能力を売るようになる。私たちのすべては多くの編集者を購読するようになる:EPICでは、彼らが選んだ記事を好きなように組み合わせることができる。」と予測している。
実は「EPIC2014」が予測するような編集者は既に存在している。一部ブロガーがその役割を果たしているのだ。わたしの愛読するブログに「ネタフル」というのがある。IT企業に勤める若手ビジネスマンが運営するブログで、一日に十数本の記事をコンスタントに執筆している。記事の形態は、ニュースや発表文を引用し、短いコメントを付け加えるというシンプルなもの。取り上げるニュースは、IT、社会、経済、芸能、スポーツ、娯楽など多岐にわたる。運営者は、ネット上を巡回して回り、自分自身の情報のアンテナに引っかかった情報だけに短いコメントをつけて記事にしている。つまりこのブログの最大の価値は、1本1本の記事の質ではなく、日々のニュースや情報の洪水の中から何を取り上げるのかという価値判断にある。
このブログは人気ランキングで常に上位入りを果たしており、ちょっとした雑誌以上にマスメディアとしての影響力を持っているかもしれない。
わたしは、このブログを読むことで、情報に敏感な日本の若手ビジネスマンに共通する関心事は何であるかという情報を入手している。米国にも情報の取捨選択が主な存在価値であるブログがあるので、米国人の共通の話題に関してはそのブログから情報収集している。つまりこうしたブログはアシスタントやエージェントの役割を果たしてくれている。それぞれの分野で今何が話題になっているか、何が重要なニュースかという情報を、忙しいわたしに代わってネット上を徘徊して入手してきてくれるわけだ。こうした情報エージェント的なブログを幾つか読むことで、わたしの情報収集力は大幅にアップしているのだ。
こうしたエージェント的なブログを利用するという方法以外にも、情報の洪水の中から重要な情報を選び出す方法があるし、その方法は今後ますます精巧になるだろう。ネットに乗る情報の増加量は加速度を高める一方。それに伴って、情報を選び出すことに対するニーズは高まる一方だからだ。ニーズがあるところに、ビジネスチャンスあり。ここが今後の産業界の主戦場の1つになることは間違いない、とわたしは考えている。
著者注:本として出版するための原稿ですが、未完成なものです。間違いの指摘やご意見をいただければ幸いです。「過去エントリをそのまま記録として残すべきだ」「細かな修正を加えるたびにPINGが飛び、RSSリーダーにほぼ同じ原稿が表示されるので困る」などという意見をいただきましたので、ご意見、ご指摘をいただいても、エントリ自体を修正しないことにしています。ですが、建設的なご指摘、ご意見は、最終原稿に必ず反映させるつもりです。繰り返しになりますが、本エントリは未完成原稿です。引用を希望される場合は、脚注にある原典に当たられることをお勧めします。
参考「本を書きます」

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