新聞協会での講演「ブログとジャーナリズム」 |
同会議の参加者は約60人。同協会の加盟紙の電子メディア部門の担当者が中心だった。
日頃から電子メディア部門の赤字に悩んでいる人がほとんどと推測されるので、参加型ジャーナリズムの話ではなく、主に新しいビジネスモデルの可能性についてお話させていただいた。
▼ブログはXML対応
一般的には、ブログは簡単に作成できることが特長だといわれているが、私は最大の特長は、XML、RSSに対応していることだと考えている。XML(eXtensible Markup Language)は、タグ付け言語のこと。新聞、通信各社はNewsMLでご存知のことと思う。XMLはインターネットを大きく変えると言われており、マイクロソフト、IBM、サンマイクロシステムズなど大手のITベンダーが普及に躍起になっているが、期待の割には普及が進んでいない。
そんな中で光明となっているのがブログである。ブログはXML対応だから、その普及によりXMLが急速に普及するのではないかと言われている。
▼ブログはジャーナリズムとなり得るか
2001年9月の米国同時多発テロの際は、ブログが活躍した。ニュースサイトがパンク状態で、アクセス不能なとき、一般市民から多くの情報がブログで発信され、一つのジャーナリズムではないかと言われた。実際、テロ発生後1か月後ごろにテレビの特集番組などで使われた写真は、ほとんどがブログ・ユーザーの撮ったものであった。報道機関が撮った写真はほとんどなく、ブログが市民ジャーナリズム的な機能を果たした。そこで私の著書でも、市民ジャーナリズムと言えるかもしれないと紹介した。
しかし現時点で、ブログが市民ジャーナリズムを形成しているかと問われると、否定的にならざるを得ない。
ほとんどのブログは身辺雑記風の内容になっており、ジャーナリズムと呼べるブログはほとんど存在しない。
イラクの様子を伝えるブログはジャーナリズムかもしれないし、新聞記者が書いているブログもジャーナリズムかもしれないが、ごく一部だ。ブログは、市民ジャーナリズムのツールにはなり得るが、今のところはジャーナリズムにはなっていないと思う。
しかしながら、新聞社はブログを利用できるのではないかと考えている。日経のサイトは編集委員のコラムを掲載しているが、これなどもブログにして読者との対話を促進することができると思う。議論が荒れるのをどう防ぐかという問題はあるかもしれないが、それを解決できれば新聞と読者との距離を縮めることに大いに貢献すると思う。読者からの情報や議論を受けて新聞ジャーナリズムの質がさらに向上する可能性を含んでいると思う。
拙著の中でも紹介したが、米国のある有名なブログ・ユーザーは、これからの新聞社は、デスク、記者、読者にそれぞれブログを開設させ、そこに掲載された記事のうち、面白いものにデスクがリンクを張って紹介していけばいいと言っている。
▼RSSリーダーが情報収集ツールの主流に
ジャーナリズムという側面でもブログは将来的に影響を及ぼすと思うが、それよりも先にブログがXMLに対応していることが、報道機関に大きな脅威を与えるのではないかと考えている。その理由の一つに、すべてのブログがRSS対応となっていることが挙げられる。RSS(一般的にはRich Site Summary)は、インターネット上で見出しや本文の一部を配信する技術で、XMLによって記述されている。
RSS技術を利用して、インターネット上から記事を収集するRSSリーダーと呼ばれるソフトがある。ブログやニュースサイトなどの記事をいち早く、多く読みたい人には最適なツールである。
RSSリーダーの利用方法は非常に簡単。例えば朝日新聞のニュースサイトなら、トップページの右上端にある小さなロゴをクリックしてアドレスhttp://www3.asahi.com/rss/index.rdfをコピーし、RSSリーダーの「登録」に貼り付けるだけ。あとは5分か10分間隔で、RSSリーダーが朝日のサイトから最新の見出しを取ってきてくれる。見出しをクリックすれば、当然朝日のサイトの該当の記事のページにジャンプする。トップページを通さない直接リンクである。
登録の解除も簡単。解除のボタンをクリックするだけで、朝日のサイトへのアクセスを中止する。
私の場合、82の報道機関とブログのRSSデータを受信して、1日600本ほどの記事の見出しと本文の一部に目を通している。報道機関とブログのリストは常に入れ替わっている。他と同じような記事ばかり配信するサイトは即刻、登録削除の対象になる。
ここで怖いと思うのは、報道機関とブログが同列に並ぶことだ。たとえ著名な報道機関であっても、他と同じような記事を出していて面白くなければユーザーは削除してしまう。
RSSリーダーは今はまだ、“ネットおたく”のためのソフトという感じがある。しかし今月に入って、ヤフーがウエブメール・サービスを提供する会社を買収したことが明らかになった。ヤフーメールのRSS機能拡充をねらっての買収だと言われている。マイクロソフトとアップルも、ウエブブラウザーやメールソフトにRSSリーダーを無料で標準搭載する予定だ。
1、2年以内にマイクロソフト、アップル、ヤフーがRSSリーダーの普及を促進するわけで、そうなれば、一般ユーザー、ビジネスマンもRSSリーダーを利用するようになるだろう。2、3年で情報収集ツールの主流になるではなかろうか。その際には新聞社はどう対応すべきなのか。
現在、RSS配信を行っている日本の新聞社系サイトは、朝日新聞、日経BPだけのようだが、rss-jp.net(http://rss-jp.net/)というサイトに、日本で配信されているRSSのリストが掲載されている。そこには他の全国紙や地方紙も挙げられているが、RSSを誰かが勝手に自動生成し、配信しているようだ。トップページからサイトに入ることをポリシーとしている新聞社が多いが、RSSにより直接記事にアクセスするようになってくると、そうしたポリシーは過去のものになってしまう。新聞社としては、どう対応すべきなのか。直接当該記事のページから入っても、広告を見てもらえるようにする、その記事のページからサイト内のいろいろなページに行きやすいように設計、デザインを変更する―などの対応が必要となるだろう。フレームといったページデザインは過去のものになるのではなかろうか。
また、簡単に登録から削除されるので、ニュースの独自性が問われる。地方紙の場合、通信社記事ばかりで、地域の独自の記事が少ないようだと人が集まらなくなる。
勝手にRSSフィードを作成するユーザーには、法的手段で対抗することも可能だろう。その場合、読者がどうしても欲しいような独自情報満載のサイトは法的手段で対抗しなければならないだろう。他でも入手可能な情報を搭載しているサイトであれば「勝手にRSSフィードを作成しないで」とお願いするだけで応じてくれるだろう。情報の洪水状態の中で、そうしたサイトの情報はそれほど必要でないからだ。そしてRSSリーダーが主要情報収集ツールになる中で、そのサイトには閑古鳥が鳴くようになる。
RSSリーダーは時代の大きな流れだ。ある程度はその流れに対抗できるかもしれないが、そのエネルギーをもっと前向きのことに使った方がいいのではなかろうか。ブログは新聞業界にとって必ずしも悪い話ではない。実は、ブログは新聞社にとって大きなビジネスチャンスに成り得るのだ。
▼新聞社サイトの究極はコミュニティーサイト
インターネットでの情報流通は多対多の双方向というまさに“ネット=網”の世界だ。いろいろな方向に情報が行き交うというのが、ネットワークの特性である。その特性を生かすという当たり前のことができれば、インターネットを有効利用した新しいビジネスが実現できる。
このようなインフラがあるのにも関わらず、現在のニュースサイトの情報伝達は1対多の一方通行である。縦横無尽に走る高速道路網に、直線しか走れない電車を通行させているようなものだ。インターネットの特性を利用せずに、ネット上のビジネスが成功するわけがない。
それでは、情報が網の目のように飛び交うとはどういうことなのだろうか。それはコミュニティーだ。
コミュニティーサイトの成功例に「フルルkansai」がある。関西電力の子会社であるマーケティング会社「かんでんCSフォーラム」が昨年8月、コミュニティーを使ったマーケティングのために立ち上げたサイトである。
会員は約1万8000人。他のブログサイトはネット好きが集まるが、このサイトの特徴は初心者が多いことである。パソコンを買ったばかりという人も多いそうだ。会員の8割が女性で、20代から40代が中心となっている。最初から主婦層をターゲットにしており、デザインも女性好みになっている。公園のような雰囲気にしたかったとのことだ。このサイトが今、関西の主婦層でブームになっている。会員にはヤフーも新聞社サイトも見たことがないが、毎日フルルは見るという人が多い。毎日見ないと生きていけないという人も多く、「フルル病」という言葉まで生まれている。
フルルは「はてな」のブログ作成ソフトを使った日記サイトである。このサイトのブログサービスの面白い機能として、「フルルワード」というものがある。キーワード登録されている言葉を日記に書くと、そこから自動的にリンクが張られる。リンク先にはその言葉の説明があり、コメントが掲載されている。店名がキーワード登録されている場合は、リンク先に所在地、電話番号などが記載されていて、「フルルmap」という地図にもリンクされている。これにより、「ここの商品がよかったよ」「おいしかったよ」というように、店の評判が“口コミ”で広がるようになっている。
これが地方紙のビジネスモデルにならないだろうか。地図やコメントに広告を掲載してはどうか。その店についてのコメントを見せて、「広告を載せませんか」と営業してはどうか。広告料金が安ければ、店は広告を載せるのではないか。ただし、コメントが批判的なものだったら、当然そこに広告を掲載することはできない。
▼ブログと掲示板は違う
ネット上の“口コミ”は一気に広がるので、ある意味では怖いが、悪意のあるコメントに対しては、必ずそれを正すコメントが現れるものだ。「2ちゃんねる」的なものを想像し、掲示板的なものには神経質になりがちだが、ブログの場合は掲示板とは違い、本人が主導権を持って議論を管理できる。
電子メールアドレスを記入しないとコメントできないようにもなっているものもある。
また悪質な議論を繰り返すブログは読まれなくなるだけだ。掲示板には、匿名でふらっと訪れ、無責任なことを書いて逃げる人がいるが、日記へのコメントではあまりそういう人はいない。ひとつの日記を続ける中で、うそは書けないものだ。うそを書きつづけるには、エネルギーがいるからだ。日記を書いていくと、人となりが表れる。その人となりが理解されれば、その日記は読まれ、つまらない人間であれば読まれない。読まれる日記は、それなりに魅力ある人が書いていることが多い。まともな議論ができるというのが、ブログの特徴だ。
ブログをベースにすれば、より質の高いコミュニティーサイトが作れるのではないかと思っている。
▼コミュニティーサイトは先手必勝
コミュニティーサイトは、まさに“網”のビジネスだ。これからは、ほとんどのネット上のビジネスが多対多の双方向のものになっていくだろう。ただ怖いのは、コミュニティーサイトは先手必勝ということだ。
オークションのコミュニティーサイトを世界で最初に始めたのが、eBayである。米国では、第1位のオークションサイトとして大もうけし、どこもその牙城を崩せない。これを見て、ヤフージャパンが日本で最初に立ち上げた。eBayもほぼ3か月遅れで日本に進出したが、ヤフーの牙城は崩せず、撤退した。ユーザーはそのコミュニティーに一度愛着を持つと、なかなか他のサイトを利用しないものだ。
その意味では、すでに「フルルkansai」の存在する関西では、新聞社が2番煎じのコミュニティーサイトを立ち上げても、成功する見込みはない。
ただ「フルルkansai」はマーケティングをビジネスモデルとした会社なので、広告に関しては素人。人手もないので、関西地方の新聞社が参入するとしたら、フルルと提携して、広告の分野でビジネスを行うということは可能だろう。ブログに代わるコミュニケーション・ツールが出てくれば話は別だが、現状では、関西でのコミュニティーサイトは「フルルkansai」で決まりだと思う。
しかし、他の地方ではこうしたコミュニティーサイトがまだでき上がっていない。地方紙にとってのビジネスチャンスがここにある。
▼マーケティングが大きなビジネスに
コミュニティーサイトの収益源は、広告、マーケティング調査、物販である。マーケティングに関し、フルルはモニター会員の募集を行っている。一般の会員登録は簡単で、郵便番号、性別、メールアドレスなどといった単純な情報を記入するだけだが、モニター会員になるには例えば住所、家族構成、職業、最終学歴、世帯年収など数十項目の詳しい属性情報を提供しなければならない。その代わり、モニター会員は謝礼をもらえる。
フルルは、その属性をもとにモニター会員から対象者を選び、アンケートやインタビューにより、企業の新商品開発・サービス改善のための意見を聴取する。また特定のテーマで日記を書いてもらい、マーケティングの材料にする。
例えば、新聞日記を書いてもらうとする。日記には「朝○時に起き、○○新聞を読んだ。1面から読み始めて、○○の記事が面白いと思った。次はテレビ欄を見た。次に家庭欄を開けたら、○○の記事が面白かった」などと、その人の新聞接触状況が詳しく書かれる。これにより、今までにない細かなマーケティング調査が行える。また、リアルタイムで消費者の動向を探ることができるという利点がある。依頼した新聞社が、日記を読んで、そこに書かれた行動の理由を知りたいと考えれば、フルルを通じてモニター会員に質問する。リアルタイムで消費者の動向のみならず、感情まで調査する、これまでにない有効なマーケティングツールになるといわれている。
とくにこれからは、マーケティングが大きなビジネスになると思う。というのはネット上で、これまで得られなかった生データが大量に入手できるようになるからだ。また、ユビキタス・ネットワークが進み、たとえばタクシーのワイパーにセンサーが付き、どの地域で雨が降り出したかが細かくわかるなど、あらゆるものにセンサーが付き、世の中は生データであふれてくるようになる。
そこで生データの分析が非常に重要な仕事となる。ブログを通じて、モニター会員の属性に加え、日記から得られる感情面の情報も入手できる。これ以上の個人情報はない。普通の企業では恐ろしくて保持できないほどの個人情報だ。今は、アンケート調査回答のはがきを落としただけで、大きな社会問題になるので、企業は個人情報保持に非常に慎重になっている。
その一方、個人情報をうまく使えば、かなり大きなビジネスができることは明らか。そこで、各企業は個人情報を使ったマーケティングを、どこかに任せたいと考えるようになるだろう。私は、そこに大きなニーズが生じることになると見ている。かんでんCSフォーラムはそうした需要をねらっているのだと思う。マーケティングが今後大きな収益を生むビジネスになることは間違いないだろう。
▼ネットの特性を生かした検索連動型広告
バナー広告はご存知のとおり、あまりもうからない。1対多の旧来型の発想をネットに移入しただけで、“網”に見合ったものではないからだ。
昨年、米国ではインターネット広告費が伸びたが、特に検索連動型広告の伸びが目立った。「自動車」をキーワードに検索すると、検索結果とともに自動車関連広告が現れるという手法であり、広告効果が非常に高い。検索する人は、自動車に関心があり、あるいは自動車を買おうとして検索しているので、広告対象と完全に合致する。まさにネットを生かした広告手法だ。この分野ではグーグルと、ヤフーが買収したオーバーチャー社が有名である。
特にグーグルは、検索連動型広告で急成長した。同社は、株式公開(IPO)により非常に多額の資金を調達することになり、注目を集めたが、これは検索連動型広告がまだまだ伸びると見られたからである。
ようやくネットの特性を生かした広告が出てきたということだ。テレビは放送開始当初、アナウンサーがラジオの広告を読み上げていた。テレビらしい広告手法となるまでに、15年かかったといわれる。インターネットの商業利用が始まって、ほぼ10年。これからインターネットらしい広告手法が確立し、広告でもうかるようになるだろう。その先駆けがこの検索連動型広告だ。
▼ブログに適するコンテンツ連動型広告
検索連動型よりさらに新しいのが、コンテンツ連動型広告である。山登りの記事のページにアウトドアグッズの店の広告を載せるというように、ウエブページの内容を自動認識し、それと関連性の高い広告を表示するサービスである。これはウエブログに適した広告手法である。例えばフルルの中のブログに、この店がおいしいということが載ると、ソフトウエアが自動的に、店の名前と「おいしい」というキーワードを認識し、その店の広告を引っ張ってくる。「まずい」となっていれば、その広告は表示されない。
一部ニュースサイトでも、グーグルによるコンテンツ連動型広告を載せているが、一般の新聞記事よりもブログでこそ、この広告手法が効果を上げるだろう。ブログでは、思ったことをそのまま書いているので、説得力がある。そこに広告を打てば非常に効果が高いからだ。
消費者がマスコミ報道よりも、ブログで書かれることを信頼する傾向も出てきている。『ネットは新聞を殺すのか』は、新聞の書評ではただ褒めていただくことの方が多くて、読者にはあまり参考にならなかったのではなかろうか。逆にネット上では厳しい評価もあった。例えば大学生に「本のつくり方が甘い」と指摘された。率直な意見なので読者の参考になったのではないかと思っている。そのようにネットで自著が紹介されたところに、コンテンツ連動でアマゾンの広告が載り、ワンクリックで購入できるようになっていれば、もっと売れたのではないだろうか。
アマゾンは当然そのような広告を始めており、楽天もさらに力を入れてくるだろう。楽天が20万人のブログ・ユーザーに対し、ただ単に無料でサービスを提供するはずがない。当然金もうけを考えている。ブログサービスを始めたインターネット・サービス・プロバイダー数社を取材したが、楽天以外は、流行だからやってみたという程度の動機。明確なビジネスモデルを持っていなかった。その中で楽天だけは、こういうサービスを提供して、こういう特性を生かして、こうもうける、という明確なビジョンを持ってブログに取り組んでいる。
楽天はおそらくブログを使った物販、広告の仕組みを次々と作っていくのだろう。新聞社のコミュニティーサイトは、グーグルのコンテンツ連動型広告、楽天が始めるであろうコンテンツ連動型物販を利用すれば、今までのバナー広告よりも収益増を見込めるのではなかろうか。
▼コミュニティーサイトを新聞社のビジネスに
コミュニティーサイトの運営は新聞社ならでは、地方紙ならではのビジネスではないかと思う。ネット上の意見を読んでいると、一般大衆と新聞の間の距離がだんだん広がっていっているように感じる。この距離をなんとかもう一度近づけたい。新聞社にはブログを使って読者の声を拾い、かつビジネスもしていただきたい。コミュニティーこそがネットの特性を生かしたビジネスだと思う。
ニュースサイトは旧来のビジネスモデルに従っている。インフラが“網”なのに、これでは勝てるわけがない。ビジネスモデルを変えるしかない。もちろんコミュニティーサイトを目指している地方紙も何社かあるが、まだブログを利用していない。
物販、広告はグーグル、ヤフー、楽天などと手を組む、マーケティングは関西CSフォーラムなどの専門会社に委託する、という形も可能だ。新聞社自体が個人情報を抱えることは、少し危険な気がする。マーケティング会社、広告、物販会社といち早く提携し、もうける仕組みを作っておいてから、コミュニティーサイトに参入してはどうか。
ただ最初から利益重視で進めていては、コミュニティーは形成されない。関西CSフォーラムは、「フルルkansai」で最初からもうけようとはしていない。コミュニティービジネスで難しいのは、もうけようとする意図が見えると、人が集まらないことだ。サービス開始当初の1、2年は、もうけようとか顧客を囲い込もうとかいう気持ちを持たないことが大事だと思う。あくまで、読者との絆を深めることを第一に考えるべきだと思う。
コミュニティービジネスで、日本で最も先行している会社に、ガーラ社というのがある。
1993年に設立された会社で、これまで様々なコミュニティーサイトを構築してきた。同社自体が運営するコミュニティーサイト「ガーラフレンド」は、ユーザー数21万人ほど。同社の会長と社長が『オンライン・コミュニティがビジネスを変える―コラボレーティブ・マーケティングへの転換』(NTT出版)という非常に参考になる本も著している。コミュニティービジネスに関し、日本で一番ノウハウを持っている会社なので、同社に相談するのもよいだろう。
▼XML対応が最大の意義
冒頭にも述べたが、XMLはこれから世の中を変えると言われながら、全然普及していない。ご存知のNewsMLの標準化が難しいように、利益が相反する人たちが一つの標準を作ろうというのだから、なかなかまとまらない。XMLも、NewsML同様期待はされているが、なかなか普及しない。ところが、XML対応であるブログが普及してきた。XMLがブログというインフラを通じて、急速に伸びてくるはずだ。これがネットを変えるブログの最大の意義だと考える。簡単に作れること、横のつながりができることも確かに大事だが、XML対応だということこそブログのすごさだ。それは我々新聞業界だけでなく、一般の業界にも関係してくる。
ブログには、静的な広告だけでなく、XMLによる動的な広告が載せられる。どの時点で見ても、最新の情報が載せられる。例えば今でも、明日の便に空席があったら、航空券が安くネット上で売り出されたりするが、そういう広告が出せる。過去の記事であっても、最新の広告が載せられる。これにより、ブログがすべて店舗化する。楽天が狙っているのはそこだろう。今はいったん、楽天のサイトに行って物を買わなければいけないが、楽天は各ブログに小さなコーナーを設け、1クリックで買い物ができるようにするのではないか。
ネットユーザーは、住所を入力したりすることを面倒がるものだが、ボタンひとつなら、衝動買いしてしまうのではないか。誰かがブログで、ある本が面白かったと書き、そこにアマゾンの広告が載っていて、1クリックで買えるとなると、つい買ってしまう。一般の人のブログにも、グーグルやアマゾンの広告が載っている。そのブログを見た人が広告をクリックするだけで、何円かの紹介料がその人に支払われ、さらに、そこをクリックした人がその本を買えば、売り上げの何%かが支払われる。こうした広告をアフィリエートと言うが、アフィリエートはこれからますます増えていくだろう。
アフィリエートの場合は、コミュニティーサイトを運営している社にも紹介料が支払われるような契約ができる。地方紙がコミュニティーサイトを運営する際には、そういう契約にしてはどうか。自社のコミュニティーサイトでそういう金もうけが行われることに懸念があるならば、例えばユーザーに対し、地域福祉の基金に寄付するので広告スペースを貸して欲しいとお願いし、寄付のうち何%かは手数料として新聞社に入るようにしてはどうだろうか。